04 May
04May


 ミラスタ!の活動との出会いは、保護者対象のある学習会で声をかけてもらったことに始まります。すでに面識のあった保護者から、「インクルーシブ公園を造りたいんだけど」と相談され、迷わず「はい!」と返事をしました。その理由は、面白そうだと思ったこと、直感的に上手くいきそうだと感じたことの他に、活動をしようとしていたのが女性だったから、です。

 つい先日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の前会長が女性蔑視の発言によって辞任したばかりですが、この発言が端的に示すように、まだまだ日本は男女平等とは言えません。男女格差を示す指標にジェンダー・ギャップ指数(世界経済フォーラム発表)というものがありますが、2020年の指数では、日本は121位(153カ国中)です。周りを見渡せば、女性が正当に認められていない場面は至る所にあります。男女平等と声高に叫ぶこと自体が意識過剰で、男女の差を認めているからではないのか、と言った意見もありますが、放っておいても変わらないものは、しっかり認識して変える必要があります。

 インクルーシブのところでも触れましたが、真のシンクルーシブは社会全体に障害者も健常者も包容されるのが最終目標だと思います。男女平等の社会についても同じで、男性中心社会に女性が包容されることではなく、社会の中に女性も男性もいるということだし、より正確に言えば、社会の中にLGBTを含む性的マイノリティも女性も男性もいるということです。けれども、今回の女性蔑視発言騒動についての報道や人々の考えを聞いている限り、まだ「男性社会」の中にどう女性を含み込んでいくか、という視点から抜け出せていないように感じるのです。 

 私は30年以上養護学校・支援学校で仕事をしてきたので、障害者差別についてもずっと考えてきました。法的には平等になり、世間の考え方も変わってきた部分もあります。けれど、まだ平等とはとても言えません。だって、公園が使えない障害者は山のようにいるのですから。こうした障害者差別の問題も、男女差別の問題も、根の所では共通しているのだと思います。力の強い側の社会が社会そのものであって、それ以外はそこに含まれる形で納得させられていくような社会の仕組みが、まだあちらこちらに、こびりついているような気がします。

 じゃあ、それを覆すのにどんな方法があるのでしょう。女性がどんどん活躍することが大事なのではないか、と私は考えています。そこで冒頭の理由になるわけです。 ハンナ・アーレントというドイツの哲学者は、人間が行うことを、労働(料理とか掃除とか)、仕事(家具を作るとか文を書くとか)、活動(自治会活動とか、ミラスタ!の活動とか!)に分けていますが、その中の「活動」こそ、人が人らしくなる場なのだと考えています。今は彼女の考えについて触れませんが、特に何かを生産するわけではない、けれど人がたくさん集まって行う活動に、世の中を変えていく力があるのだということは、とても大切な視点です。ミラスタ!の活動だけでインクルーシブ公園を造ることは難しいでしょう。行政の力も必要ですし、実際に公園を造るための様々な専門家が必要です。でもミラスタ!は、そうしたことを実現するエネルギー源になることはできるはずです。  


 私たちミラスタ!は、まずインクルーシブ公園実現に向けて活動します。でも、インクルーシブ公園を造ることが最終目標ではありません。公園をインクルーシブにすることが最終目標です。男女平等社会を実現することではなく、社会を男女平等にすることが大切です。そして、インクルーシブ社会を目指すのではなく、社会をインクルーシブにすることが願いです。だから、保護者も教員も職員も、女性も男性も、障害があってもなくても、みんな同じ一人、として活動するのがミラスタ!の形です。                                    事務局長 西村猛

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